世界一詳しくわかりやすく!【政治経済】平等権①ー尊属殺人重罰規定・婚外子法定相続分差別違憲判決

 この記事では高校公民科「政治・経済」の内容を説明しています。なおこれまで公開していたノートは作成に時間がかかり、ブログの更新が滞ってしまいますので、後日作成し配信いたします。必要な図はその都度提示したりしますので、ご安心ください。

 

平等権

 今回からは平等権について学習していきます。ここでは日本において平等とは何か、という倫理的なことから、憲法ではどのように保障されているのか、ということについて学習していきます。では根拠条文である、日本国憲法14条を以下に示します。

第十四条 すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。
② 華族その他の貴族の制度は、これを認めない。
③ 栄誉、勲章その他の栄典の授与は、いかなる特権も伴はない。栄典の授与は、現にこれを有し、又は将来これを受ける者の一代に限り、その効力を有する。

平等権の定義

 では平等権の定義を紹介するところから始めましょう。「すべての国民が権利において平等であり、すべての人権の基礎となる権利」と定義されます。基本的人権のところはガタガタ定義を並べていくより具体例を紹介していった方が理解しやすいので次からどんどん紹介していきましょう。

事例① 尊属殺人重罰規定違憲判決

事件の概要

 被告人の女性A(当時29歳)は、14歳の時から実父B(当時53歳)によって性的虐待を継続的に受けていた。女性Aは実父Bから性行為を強要されて父娘の間で5人の子供を出産し、夫婦同然の生活を強いられていた。逃げ出せば暴力によって連れ戻され、やがて逃げることも諦めるようになった。また、自分が逃げることで同居していた妹が同じ目に遭う恐れがあったため、逃亡がためらわれた。
そうした中、女性Aにも職場で相思相愛の相手が現れ、正常な結婚をする機会が巡ってきた。その男性と結婚したい旨を実父Bに打ち明けたところ、実父Bは激怒し、女性Aを自宅に監禁した。その間にも実父Bは女性Aに性交を強要した上、罵倒するなどした。
 監禁10日目の1968年10月5日、実父Bはもし家を出るなら女性Aや子供らを殺害すると叫びながら女性Aに襲いかかった。女性Aは、これまでの苦悩・実父との関係を断ち切り、この窮地を脱して世間並みの結婚をする自由を得るためには、もはや実父Bを殺害するほか術はないと考えた。そしてとっさに枕元にあった腰紐を取り、実父Bを絞殺するにいたった。
Wikipedia概要文から一部表現を変えた)

 

事件の争点


尊属殺人が一般殺人と比較して刑罰を重く規定する刑法200条は憲法14条に違反しないか。
②たとえ刑法200条が合憲であったとしても、著しく刑罰が重くないか。

 

参考条文


刑法199条 人ヲ殺シタル者ハ死刑又ハ無期若シクハ 3年以上ノ懲役二処ス
刑法200条 自己又ハ配偶者ノ直系ノ尊属ヲ殺シタル者ハ死刑又ハ無期懲役二処ス

 この事件の情報は以上のとおりです。ではこの事件について検討していきましょう。というところですが、この記事は人権保障の最初の教材としてこの事件を扱っていますので、以下にリンクを貼っておきます。では判決について確認してこの事件は終わりにします。

 

判決


第1審:刑法200条を違憲としAは刑を免除
第2審:刑法200条を合憲としてAは懲役3年6月
最高裁:刑法200条を合憲としてAには刑法199条を適用。Aには懲役2年6月執行猶予3年

 

※参考条文は1995年改正以前のものを使用しました。

 

事例②婚外子法定相続分差別違憲判決

事件の概要

 
 2001年7月25日に東京都の男性が死亡し、婚内子(嫡出子)3人と婚外子(非嫡出子)2人がいたが、婚外子(非嫡出子)側が「民法の相続規定は違憲・無効」と主張して、婚内子(嫡出子)と同等の取り分を求めて家事審判となった。
 2012年3月26日の東京家裁及び2012年6月22日の東京高裁では婚外子(非嫡出子)側の主張を認めなかった。そのため、婚外子(非嫡出子)側が特別抗告をした。
Wikipedia概要文から一部表現を変えた)
※なお同時期に和歌山県でも同様の審判の申し立てがあった。

 

事件の争点

 

①嫡出子と非嫡出子との間で相続分の差があることは憲法14条に違反しないか。

 

参考条文


民法900条4号 子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。ただし、嫡出でない子の相続分は、嫡出である子の相続分の2分の1とし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の2分の1とする。

 

 用語解説です。嫡出子とは「婚姻中の夫婦の間で生まれた子」を指します。つまり民法900条の4号では、婚姻している夫婦の子供かそうではないかのみによって差別していました。これは違憲だという判断がされたというわけです。というわけで判決を確認しましょう。

 

判決


最高裁:原決定を破棄。高裁に差し戻しとする。ただし民法900条4号は憲法14条に反するため無効とする。

 

※参考条文は2013年改正以前のものを使用しました。

 

 以上で平等権第1回は終わりです。法の下の平等について扱いました。次回は女性差別問題について扱っていきます。