世界一詳しくわかりやすく!【政治経済】人権の性質

 この記事では高校公民科「政治・経済」の内容を説明しています。なおこれまで公開していたノートは作成に時間がかかり、ブログの更新が滞ってしまいますので、後日作成し配信いたします。必要な図はその都度提示したりしますので、ご安心ください。

 

人権について

 人権について学習していきます。では法務省が20世紀最後にまとめた、人権の問題例を見ていきましょう。

 

(1)     女性に関する課題として,人々の意識の中に形成された固定的役割分担意識等からくる,就職の際や職場における昇進の際の男女差別の問題のほか,セクシュアルハラスメント,家庭内における暴力などの問題がある。
(2)     子どもに関する課題として,子どもたちの間のいじめは依然として憂慮すべき状況にあるほか,教師による児童生徒への体罰も後を絶たない。また,親による子どもへの虐待なども深刻化しつつある。
(3)     高齢者に関する課題として,我が国における平均寿命の大幅な伸びや少子化などを背景として社会の高齢化が急速に進む中,就職に際しての差別の問題のほか,介護を要する高齢者に対する家庭や施設における身体的・心理的虐待や高齢者の財産を本人に無断でその家族等が処分するなどの問題がある。
(4)     障害者に関する課題として,就職に際しての差別の問題のほか,障害者への入居・入店拒否などの問題が依然として存在しており,さらに,施設内における知的障害者等に対する身体的虐待事件の多発などが近時目を引く。
(5)     同和問題に関する課題として,同和問題に関する国民の差別意識は,特に昭和40年の同和対策審議会答申以降の同和教育及び啓発活動の推進等により着実に解消に向けて進んでいるが,結婚問題を中心に,地域により程度の差はあるものの依然として根深く存在している。就職に際しての差別の問題や同和関係者に対する差別発言,差別落書などの問題もある。
(6)     アイヌの人々に関する課題として,結婚や就職に際しての差別の問題のほか,差別発言などの問題がある。
(7)     外国人に関する課題として,諸外国との人的・物的交流が飛躍的に拡大し,我が国に在留する外国人が増えつつある中,就労に際しての差別の問題のほか,外国人への入居・入店拒否など様々な問題がある。また,在日朝鮮人児童生徒への暴力や嫌がらせなどの事件や差別発言などの問題もある。
(8)     HIV感染者やハンセン病の患者及び元患者に関する課題として,日常生活や職場・医療現場における差別の問題のほか,マスメディアの報道によるプライバシーの侵害などの問題がある。
(9)     刑を終えて出所した人に関する課題として,就職に際しての差別の問題のほか,悪意のある噂の流布などの問題がある。

人権尊重の理念に関する国民相互の理解を深めるための教育及び啓発に関する施策の総合的な推進に関する基本的事項について(答申)より引用

 

 このような問題があるわけです。ではこのような人権問題がある中、そもそも人権とは何かということを確認していきましょう。

人権の性質

 人権と基本的人権はほぼ同義です。では定義はどのようにされるのか。「人間が生まれながらにして当然持っている権利」です。さてこのような人権には次の 3つの性質があります。

①固有性…人間が生まれながらにして当然持っている
②普遍性…誰でも持っている
③不可侵性…基本的には誰も侵すことができない

 これが 3つの性質として定義されています。ただこれが直接そのまま私たちに適用されるわけではありません。では次の項でこれらの例を確認しましょう。

 

直接人権の定義が適用されない場合

 まず国民は「公共の福祉」に反しない場合適用されます。つまり一定程度以上迷惑をかけない場合に人権の定義が適用されるのです。では次にある属性の人が適用されない場合について紹介していきます。

①未成年
 基本的に成人と同様に適用されますが、発達の度合いを考慮して一部が制限されます。例えば選挙権や婚姻の自由などが制限されるわけです。

②外国人
 基本的には普通の人と同様に適用されますが、外国人であるという状況を考慮して制限されることがあります。例えば国政選挙の選挙権、入国の自由などが当てはまります。

天皇
 学説が分かれているためここでは紹介を最小限にしますが、少なくとも一般国民とは異なった扱いをされます。

④公務員
 公務員は日本の「全体の奉仕者」とされるため一定程度人権が制限されます。参政権労働三権の一部が当てはまります。

 このほかにも法人については基本的に支障がない限り個人と同様の人権が認められます。

私人間の人権保障

 私人と私人の間における人権保障について2つの学説を紹介して終了にします。まず直接適用説です。これは私人との間においての憲法の規定をそのまま適用することで、人権を保障しているという考え方です。次にあるのは間接適用説です。これは民法などの私法を通して適用するという説です。

 長くなりましたが、人権の保障について詳しく扱いました。次回からは人権の具体的内容について学習していきます。