世界一詳しくわかりやすく!【政治経済】よくわかる同性婚訴訟

 

現代社会の諸課題の1つです

 今回は同性婚訴訟について扱っていきます。一般教養として学習しておきましょう。

 今回についてはニュース記事を読んでみましょう。

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  同性どうしの結婚が認められないのは憲法で保障された「婚姻の自由」や「平等原則」に反するとして、北海道の同性カップル3組6人が国に1人100万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、札幌地裁(武部知子裁判長)は17日、法の下の平等を定めた憲法14条に違反すると認定した。原告の請求は棄却した。東京、大阪など全国5地裁で争われている同種訴訟で司法判断が出たのは初めて。

(上記記事より引用)

参考条文

日本国憲法
第13条 すべて国民は、個人として尊重される。 生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。

第14条 すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。 
華族その他の貴族の制度は、これを認めない。 
③ 栄誉、勲章その他の栄典の授与は、いかなる特権も伴はない。 栄典の授与は、現にこれを有し、又は将来これを受ける者の一代に限り、その効力を有する。

第24条 婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。 配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない。

 はいどれもこれまで扱ってきたものですね。このようなデリケートな問題は、どうしても試験にはしにくいですが、ダイバーシティ構想などは小論文などの問題にされていますから、一般教養として扱いました。

 

判決の解説

 日本国憲法24条では、婚姻は「両性」の間で成立すると規定されていますが、原告の同性カップル3組は、この規定は同性婚を否定していないと主張しました。札幌地裁は、法の下の平等を定めた14条に違反すると判断しましたが、13条と24条については違憲には当たらないとし、原告の請求を棄却しました。

これは、同性婚が認められるべきかどうかについての重要な判断であり、今後の議論に大きな影響を与えることが予想されます。この判決により、同性愛者が婚姻によって生じる法的効果を認めない民法及び戸籍法の規定は、憲法14条1項に違反するとされました。

背景

このような判決が出された背景には、多くの人々が多様性の重要さに気付き始めており、世の中の空気が変わりつつあることが挙げられます。日本では2003年に性同一性障害者特例法が制定されていて性転換手術を受けた方は、性別を変えてもOKというようになっています。これからの議論に期待です。

 次回は夫婦同姓規定訴訟について扱っていきます。

世界一詳しくわかりやすく!【政治経済】よくわかる女性再婚禁止期間規定違憲判決

 この記事では高校公民科「政治・経済」の内容を説明しています。なおこれまで公開していたノートは作成に時間がかかり、ブログの更新が滞ってしまいますので、後日作成し配信いたします。必要な図はその都度提示したりしますので、ご安心ください。

 

女性再婚禁止期間規定違憲判決とは

 

2011年(平成23年)に、岡山県に住む女性が「民法の再婚禁止期間があるため、結婚が遅れ精神的苦痛を受けた」として、日本国政府法務省)に165万円の損害賠償を求めて提訴した。女性は前夫の家庭内暴力が原因で、2008年(平成20年)に離婚したが、後夫との再婚は離婚届から6ヶ月後まで待たざるを得なかった

2012年(平成24年)10月、岡山地方裁判所判決は「立法の趣旨には合理性がある」として原告側の請求を退け、2013年(平成25年)4月、広島高等裁判所岡山支部判決も同判断を支持した

2015年(平成27年)12月16日、最高裁判所大法廷は「100日を超えて女性の再婚禁止期間を設ける部分は、2008年当時において、憲法14条1項、24条2項に違反するに至っていた」として、100日以内の再婚禁止規定は合憲であると認めながら、100日を超える部分については違憲とした。

Wikipediaより引用)

 

女性再婚禁止期間規定違憲判決の背景

女性再婚禁止期間規定違憲判決とは、日本の法律において女性に対して設けられていた再婚禁止期間を違憲とする判決のことです。以前は、離婚後に女性が再婚するためには一定の期間を経過しなければならないという規定がありましたが、この判決によってその規定が違憲とされました。

 この規定は万が一離婚時に子どもを妊娠していた際に、親を早く決定するための制度でしたが、現代にはそぐわないと判断されたわけです。

 この判決は、男女平等の観点から見ても妥当性が疑われる規定であり、女性の再婚権を制限することは、社会的な進歩に反するものであるとされました。また、この規定は女性の自己決定権を侵害しているとも指摘され、違憲と判断されるに至りました。

女性再婚禁止期間規定違憲判決の意義

 女性再婚禁止期間規定違憲判決の意義は大きいと言えます。まず、この判決によって女性の再婚権が保障されることになりました。再婚禁止期間が違憲とされることで、女性は離婚後すぐに再婚することができるようになります(2022年に民法の改正案が可決されました)。これによって、女性が自身の人生を選択する権利が保たれることになります。

 さらに、この判決は男女平等の観点からも重要な意義を持っています。婚姻関係において、男女は平等な権利を持つべきです。再婚禁止期間は、女性に対してだけ設けられていた規定であり、男性には存在しなかったのです。このような差別的な規定は社会的な進歩に反し、男女平等を実現するためには撤廃されるべきでした。

女性の再婚権と社会的な意義

 女性の再婚権は、社会的な意義も持っています。まず、女性が再婚することによって、自己実現や幸福を追求することができます。より早く再婚が可能なことで、女性は新たなパートナーや家族を見つけることができ、自己実現や幸福を追求する機会が広がるのです。

 また、女性の再婚権は、経済的な自立にもつながります。再婚は、女性が再びパートナーと共に生活することを意味します。経済的な負担を分担できるパートナーがいることで、女性はより安定した生活を送ることができます。これによって、女性の経済的な自立が促進され、社会全体の経済活動にもプラスの影響を与えることが期待されます。

 

 女性の再婚権の保障は、社会的な進歩と男女平等を実現するための重要なステップです。女性が自身の人生を選択し、自己実現や幸福を追求する権利が保たれることで、社会全体の発展にも貢献します。新時代の女性の再婚権を支えることは、私たち全員の関心事であり、取り組むべき課題です。

世界一詳しくわかりやすく!【政治経済】よくわかる比較生産費説

 この記事では高校公民科「政治経済」の経済分野について解説しています。記事内では時事問題等も扱っていますが、更新日当時の情報です。実際の状況とは異なっている場合がありますからご注意ください。

 


経済学の威力

 経済学とは限られたお金でどれだけの財・サービスを作り出せるかを研究する学問です。今回は経済学の基礎となる事柄について学習していきます。ちなみに財・サービスについては以下の記事で解説しています。

比較生産費説

 今回は経済学の最初ということで、「比較経済費説」について学習していきます。一番理解しにくい分野になります。以下の図をご覧ください。

比較生産費説(特化前)

比較生産費説(特化後)

*1


 本来は国際経済について学習するべき内容になるんですが、経済の基本的な考え方を網羅しているのであえて最初に扱います。上図を用いて説明していきます。

 まず特化前というところをご覧ください。イギリスは葡萄酒と毛織物の生産をどちらかに絞るとしたら、どっちの方が効率的だと言えるでしょうか。明らかに毛織物です。そのほうが少ない人数で生産できますから、その分もっと多く生産することができるはずです。反対にポルトガルではどうでしょうか。同じ考え方で葡萄酒の生産の方が効率的と言えるでしょう。

 このようにして特化することで、生産物を増やすことができる。という考え方なんです。特化した教科書とか読んでいると堅っ苦しい内容で理解しにくいのですが、このように本質を突けば一瞬で解決します。

 ちなみにこれを考えついたのはイギリスの経済学者「リカード」で、主著は「経済学及び課税の原理」です。

話を戻して…経済学の基礎

 今まで説明したような理論によって財・サービスを多く提供するには、得意分野に分けて作業したり、協力した方がいいよねという話になるんです。これを分業・協業といいます。

 生産するためには土地とか労働力、資本(事業を興すためのお金)が必要になりますよね。これらのことを生産のために必要な要素なので生産要素といいます。そしてそれらの資源を最も効率的な使い方を探究する「資源の最適な配分」の実現が経済学の目標になるわけです。

 次回は「資本主義」について学習していきます。

世界一詳しくわかりやすく!【政治経済】よくわかる貨幣

 この記事では高校公民科「政治経済」の経済分野について解説しています。記事内では時事問題等も扱っていますが、更新日当時の情報です。実際の状況とは異なっている場合がありますからご注意ください。

 今回からは経済分野について扱っていきます。経済分野がおざなりになって高校の授業が終わってしまうなんていうのはよくある話でございます。ですので政治分野よりも丁寧に解説していきますからご安心を。

 

経済の学習の始まり

 経済を学習するためには経済の定義を学習する必要性がありますね。というわけで定義の確認です。といって辞典でも出してこればいいですけど、余計混乱すると思うので次のように押さえておけば十分です。「お金関係のこと」これで十分です。ちなみに経済という言葉を考えたのは福沢諭吉です。

 経済学では形のある生産物のことを「財」といいます。テレビなんかがいい例でしょう。また形のない生産物のことを「サービス」といいます。演奏会なんかがいい例でしょう。では経済はいかにして生まれたかという話に移ります。

物々交換から始まった経済

 よく人間の進化なんていう話をすると、物々交換をしていたなんていう話がされますが、これが経済の始まりです。それぞれ個人が生活の全てを自分で行なっていた状態から、生活の営みを細分化して、それぞれ得意な人がやるという発想です。
 しかしこの方法では互いに求めているものを持っていないとこの話は成立しないわけです。相手が求めているものをお互いに持っていないとこの話は成立しない。そこで「貨幣」という思想が出てきたというわけです。
 少し論理が飛躍しました。貨幣というものを媒介すればお互いに求めているものを持っていなかったとしても、成立する。それはなぜでしょうか。物々交換の短い話を用いて説明しましょう。

 ジョンは魚を2匹釣ってきた。自分で食べるのには1匹あれば十分だ。そこにエリーがやってきた。エリーは山でウサギを獲ってきた。しかしこれはエリーが食べる分しかない。
 ジョンとエリーは物々交換をすることを互いに提案した。ジョンは魚を1匹やるからウサギを1羽欲しいと言った。しかしエリーはウサギが自分が食べる分しかない。ただ魚は欲しい。

 このような場面に出くわしたとき貨幣があったらどうなるでしょうか。続きです。

 そこでジョンは魚を1匹やった。その代わりにエリーは山で見つけた珍しい石を上げることにした。その後ジョンはその珍しい石と交換に他の人からウサギをもらうことにしたのだ。

 この文中で出てきた珍しい石が「貨幣」です。なぜこれが成立するのかという話を次の項でしていきます。

貨幣の本質

 貨幣の本質とは何でしょうか。ズバリそれは「その場にいる人間全員が貴重だと思い込んでいるもの」です。貴重だと思い込んでいるというのは、皆さんが普段使っているお札を例に挙げれば一撃で解決するわけなんです。どういうことかというと日本国民全員が貴重だと思い込んでいるから成立するんです。もし明日日本がなくなったら、そのお札は紙切れになるわけですよね。
 もっとわかりやすく言いましょう。世の中にはカードゲームがあるわけです。その中にはとてもレアなカードがあるわけです。これは希少だからみんな欲しい。だから価値が高くなる。そういうカラクリです。ちなみに好き勝手模倣品が作られたら価値が下がりますから管理する人も必要になるといったカラクリもあったりします(模倣品を作るのは違法です。やめましょうね)。

というわけで経済の学習の始まりということで、お金の本質について扱いました。次回は経済学の学習意義、そして経済体制について扱っていきます。

世界一詳しくわかりやすく!【政治経済】平等権②-日産自動車男女別定年差別訴訟(男女差別①)

 この記事では高校公民科「政治・経済」の内容を説明しています。なおこれまで公開していたノートは作成に時間がかかり、ブログの更新が滞ってしまいますので、後日作成し配信いたします。必要な図はその都度提示したりしますので、ご安心ください。

 

平等権はつづくよ

 平等権はめちゃくちゃ長いです。あと数回は平等権について扱っていくわけになるのですが、とにかく判例が多いんですね。全部覚える必要性はどう考えてもあるんですよ(笑)。ただある程度の条文を知っておけば導き出せるという数学にありそうな展開です。事件とかの名称を押さえておいてどんな展開になったのか、ということだけで大丈夫なんです。というわけで今回もまた条文を紹介して具体的な判例をいくつか見ていきましょう。

女性差別憲法24条を読む

 では今回扱う憲法条文を確認していきます。

第二十四条 婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。
② 配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない。

 この内容はどういう経緯でできたのかというと、戦前の日本では女性差別が激しかったんですね。それでそこをどうにかしようとできたのが、この条文だったんです。基本的には男女は平等だよっていう内容なんだと押さえておきましょう。では具体例を紹介していきましょう。

事例① 日産自動車男女別定年差別訴訟

 

事件の概要

 原告女性の勤務先会社(プリンス自動車工業)は1966年に被告会社(日産自動車)に吸収合併された。合併前の会社は男女とも55歳定年だったが、新しい勤務先となった会社は就業規則で定年を男性55歳、女性50歳と定めていた。そして、満50歳となった原告は1969年1月末で退職を命じられた。これに対し、女性は従業員である地位の確認を求める仮処分申請を起こしたが、一審・二審とも請求を棄却したため女性が本訴に及んだ。しかし本訴では一審・二審とも男女別定年制が違法であると認めたため、会社側が日本国憲法第14条、民法90条の解釈誤りを主張して上告。

Wikipediaの概要文を引用)

事件の争点

①男女差別は憲法24条で保障されているため憲法14条に違反しないか。

参考条文

憲法第十四条 すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。
② 華族その他の貴族の制度は、これを認めない。
③ 栄誉、勲章その他の栄典の授与は、いかなる特権も伴はない。栄典の授与は、現にこれを有し、又は将来これを受ける者の一代に限り、その効力を有する。

解説

 他にも同様の「住友電工事件」「野村證券コース別人事訴訟」などがありますが、基本的な構造は同じですので、ここでは特に掲載することはしません。現代の常識から言うとこれはあり得ないだろうと言う話になりますが、同様の訴訟がいろいろあることからも読み取れるように、このようなことが罷り通っていた時代があったと言うわけなんですね。以下に判決はあらためて載せることにはしますが、公序良俗に反すること(これを定義しているのが民法90条)だとしてこのような就業規則は無効としました。
 公序良俗とは公の秩序や善良の風俗を乱すもの、つまり倫理的にまずいことをすること(例:奴隷的扱いをすることなど)は無効とするものです。

判決

最高裁民法90条の規定により男女別定年は違法。日産自動車の上告は棄却とする。

 

 今回はここまでです。次回最高難度の判例が待ち構えています。心して臨みましょう。

世界一詳しくわかりやすく!【政治経済】平等権①ー尊属殺人重罰規定・婚外子法定相続分差別違憲判決

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平等権

 今回からは平等権について学習していきます。ここでは日本において平等とは何か、という倫理的なことから、憲法ではどのように保障されているのか、ということについて学習していきます。では根拠条文である、日本国憲法14条を以下に示します。

第十四条 すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。
② 華族その他の貴族の制度は、これを認めない。
③ 栄誉、勲章その他の栄典の授与は、いかなる特権も伴はない。栄典の授与は、現にこれを有し、又は将来これを受ける者の一代に限り、その効力を有する。

平等権の定義

 では平等権の定義を紹介するところから始めましょう。「すべての国民が権利において平等であり、すべての人権の基礎となる権利」と定義されます。基本的人権のところはガタガタ定義を並べていくより具体例を紹介していった方が理解しやすいので次からどんどん紹介していきましょう。

事例① 尊属殺人重罰規定違憲判決

事件の概要

 被告人の女性A(当時29歳)は、14歳の時から実父B(当時53歳)によって性的虐待を継続的に受けていた。女性Aは実父Bから性行為を強要されて父娘の間で5人の子供を出産し、夫婦同然の生活を強いられていた。逃げ出せば暴力によって連れ戻され、やがて逃げることも諦めるようになった。また、自分が逃げることで同居していた妹が同じ目に遭う恐れがあったため、逃亡がためらわれた。
そうした中、女性Aにも職場で相思相愛の相手が現れ、正常な結婚をする機会が巡ってきた。その男性と結婚したい旨を実父Bに打ち明けたところ、実父Bは激怒し、女性Aを自宅に監禁した。その間にも実父Bは女性Aに性交を強要した上、罵倒するなどした。
 監禁10日目の1968年10月5日、実父Bはもし家を出るなら女性Aや子供らを殺害すると叫びながら女性Aに襲いかかった。女性Aは、これまでの苦悩・実父との関係を断ち切り、この窮地を脱して世間並みの結婚をする自由を得るためには、もはや実父Bを殺害するほか術はないと考えた。そしてとっさに枕元にあった腰紐を取り、実父Bを絞殺するにいたった。
Wikipedia概要文から一部表現を変えた)

 

事件の争点


尊属殺人が一般殺人と比較して刑罰を重く規定する刑法200条は憲法14条に違反しないか。
②たとえ刑法200条が合憲であったとしても、著しく刑罰が重くないか。

 

参考条文


刑法199条 人ヲ殺シタル者ハ死刑又ハ無期若シクハ 3年以上ノ懲役二処ス
刑法200条 自己又ハ配偶者ノ直系ノ尊属ヲ殺シタル者ハ死刑又ハ無期懲役二処ス

 この事件の情報は以上のとおりです。ではこの事件について検討していきましょう。というところですが、この記事は人権保障の最初の教材としてこの事件を扱っていますので、以下にリンクを貼っておきます。では判決について確認してこの事件は終わりにします。

 

判決


第1審:刑法200条を違憲としAは刑を免除
第2審:刑法200条を合憲としてAは懲役3年6月
最高裁:刑法200条を合憲としてAには刑法199条を適用。Aには懲役2年6月執行猶予3年

 

※参考条文は1995年改正以前のものを使用しました。

 

事例②婚外子法定相続分差別違憲判決

事件の概要

 
 2001年7月25日に東京都の男性が死亡し、婚内子(嫡出子)3人と婚外子(非嫡出子)2人がいたが、婚外子(非嫡出子)側が「民法の相続規定は違憲・無効」と主張して、婚内子(嫡出子)と同等の取り分を求めて家事審判となった。
 2012年3月26日の東京家裁及び2012年6月22日の東京高裁では婚外子(非嫡出子)側の主張を認めなかった。そのため、婚外子(非嫡出子)側が特別抗告をした。
Wikipedia概要文から一部表現を変えた)
※なお同時期に和歌山県でも同様の審判の申し立てがあった。

 

事件の争点

 

①嫡出子と非嫡出子との間で相続分の差があることは憲法14条に違反しないか。

 

参考条文


民法900条4号 子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。ただし、嫡出でない子の相続分は、嫡出である子の相続分の2分の1とし、父母の一方のみを同じくする兄弟姉妹の相続分は、父母の双方を同じくする兄弟姉妹の相続分の2分の1とする。

 

 用語解説です。嫡出子とは「婚姻中の夫婦の間で生まれた子」を指します。つまり民法900条の4号では、婚姻している夫婦の子供かそうではないかのみによって差別していました。これは違憲だという判断がされたというわけです。というわけで判決を確認しましょう。

 

判決


最高裁:原決定を破棄。高裁に差し戻しとする。ただし民法900条4号は憲法14条に反するため無効とする。

 

※参考条文は2013年改正以前のものを使用しました。

 

 以上で平等権第1回は終わりです。法の下の平等について扱いました。次回は女性差別問題について扱っていきます。

世界一詳しくわかりやすく!【政治経済】人権の性質

 この記事では高校公民科「政治・経済」の内容を説明しています。なおこれまで公開していたノートは作成に時間がかかり、ブログの更新が滞ってしまいますので、後日作成し配信いたします。必要な図はその都度提示したりしますので、ご安心ください。

 

人権について

 人権について学習していきます。では法務省が20世紀最後にまとめた、人権の問題例を見ていきましょう。

 

(1)     女性に関する課題として,人々の意識の中に形成された固定的役割分担意識等からくる,就職の際や職場における昇進の際の男女差別の問題のほか,セクシュアルハラスメント,家庭内における暴力などの問題がある。
(2)     子どもに関する課題として,子どもたちの間のいじめは依然として憂慮すべき状況にあるほか,教師による児童生徒への体罰も後を絶たない。また,親による子どもへの虐待なども深刻化しつつある。
(3)     高齢者に関する課題として,我が国における平均寿命の大幅な伸びや少子化などを背景として社会の高齢化が急速に進む中,就職に際しての差別の問題のほか,介護を要する高齢者に対する家庭や施設における身体的・心理的虐待や高齢者の財産を本人に無断でその家族等が処分するなどの問題がある。
(4)     障害者に関する課題として,就職に際しての差別の問題のほか,障害者への入居・入店拒否などの問題が依然として存在しており,さらに,施設内における知的障害者等に対する身体的虐待事件の多発などが近時目を引く。
(5)     同和問題に関する課題として,同和問題に関する国民の差別意識は,特に昭和40年の同和対策審議会答申以降の同和教育及び啓発活動の推進等により着実に解消に向けて進んでいるが,結婚問題を中心に,地域により程度の差はあるものの依然として根深く存在している。就職に際しての差別の問題や同和関係者に対する差別発言,差別落書などの問題もある。
(6)     アイヌの人々に関する課題として,結婚や就職に際しての差別の問題のほか,差別発言などの問題がある。
(7)     外国人に関する課題として,諸外国との人的・物的交流が飛躍的に拡大し,我が国に在留する外国人が増えつつある中,就労に際しての差別の問題のほか,外国人への入居・入店拒否など様々な問題がある。また,在日朝鮮人児童生徒への暴力や嫌がらせなどの事件や差別発言などの問題もある。
(8)     HIV感染者やハンセン病の患者及び元患者に関する課題として,日常生活や職場・医療現場における差別の問題のほか,マスメディアの報道によるプライバシーの侵害などの問題がある。
(9)     刑を終えて出所した人に関する課題として,就職に際しての差別の問題のほか,悪意のある噂の流布などの問題がある。

人権尊重の理念に関する国民相互の理解を深めるための教育及び啓発に関する施策の総合的な推進に関する基本的事項について(答申)より引用

 

 このような問題があるわけです。ではこのような人権問題がある中、そもそも人権とは何かということを確認していきましょう。

人権の性質

 人権と基本的人権はほぼ同義です。では定義はどのようにされるのか。「人間が生まれながらにして当然持っている権利」です。さてこのような人権には次の 3つの性質があります。

①固有性…人間が生まれながらにして当然持っている
②普遍性…誰でも持っている
③不可侵性…基本的には誰も侵すことができない

 これが 3つの性質として定義されています。ただこれが直接そのまま私たちに適用されるわけではありません。では次の項でこれらの例を確認しましょう。

 

直接人権の定義が適用されない場合

 まず国民は「公共の福祉」に反しない場合適用されます。つまり一定程度以上迷惑をかけない場合に人権の定義が適用されるのです。では次にある属性の人が適用されない場合について紹介していきます。

①未成年
 基本的に成人と同様に適用されますが、発達の度合いを考慮して一部が制限されます。例えば選挙権や婚姻の自由などが制限されるわけです。

②外国人
 基本的には普通の人と同様に適用されますが、外国人であるという状況を考慮して制限されることがあります。例えば国政選挙の選挙権、入国の自由などが当てはまります。

天皇
 学説が分かれているためここでは紹介を最小限にしますが、少なくとも一般国民とは異なった扱いをされます。

④公務員
 公務員は日本の「全体の奉仕者」とされるため一定程度人権が制限されます。参政権労働三権の一部が当てはまります。

 このほかにも法人については基本的に支障がない限り個人と同様の人権が認められます。

私人間の人権保障

 私人と私人の間における人権保障について2つの学説を紹介して終了にします。まず直接適用説です。これは私人との間においての憲法の規定をそのまま適用することで、人権を保障しているという考え方です。次にあるのは間接適用説です。これは民法などの私法を通して適用するという説です。

 長くなりましたが、人権の保障について詳しく扱いました。次回からは人権の具体的内容について学習していきます。