世界一詳しくわかりやすく!【政治経済】平等権②-日産自動車男女別定年差別訴訟(男女差別①)

 この記事では高校公民科「政治・経済」の内容を説明しています。なおこれまで公開していたノートは作成に時間がかかり、ブログの更新が滞ってしまいますので、後日作成し配信いたします。必要な図はその都度提示したりしますので、ご安心ください。

 

平等権はつづくよ

 平等権はめちゃくちゃ長いです。あと数回は平等権について扱っていくわけになるのですが、とにかく判例が多いんですね。全部覚える必要性はどう考えてもあるんですよ(笑)。ただある程度の条文を知っておけば導き出せるという数学にありそうな展開です。事件とかの名称を押さえておいてどんな展開になったのか、ということだけで大丈夫なんです。というわけで今回もまた条文を紹介して具体的な判例をいくつか見ていきましょう。

女性差別憲法24条を読む

 では今回扱う憲法条文を確認していきます。

第二十四条 婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない。
② 配偶者の選択、財産権、相続、住居の選定、離婚並びに婚姻及び家族に関するその他の事項に関しては、法律は、個人の尊厳と両性の本質的平等に立脚して、制定されなければならない。

 この内容はどういう経緯でできたのかというと、戦前の日本では女性差別が激しかったんですね。それでそこをどうにかしようとできたのが、この条文だったんです。基本的には男女は平等だよっていう内容なんだと押さえておきましょう。では具体例を紹介していきましょう。

事例① 日産自動車男女別定年差別訴訟

 

事件の概要

 原告女性の勤務先会社(プリンス自動車工業)は1966年に被告会社(日産自動車)に吸収合併された。合併前の会社は男女とも55歳定年だったが、新しい勤務先となった会社は就業規則で定年を男性55歳、女性50歳と定めていた。そして、満50歳となった原告は1969年1月末で退職を命じられた。これに対し、女性は従業員である地位の確認を求める仮処分申請を起こしたが、一審・二審とも請求を棄却したため女性が本訴に及んだ。しかし本訴では一審・二審とも男女別定年制が違法であると認めたため、会社側が日本国憲法第14条、民法90条の解釈誤りを主張して上告。

Wikipediaの概要文を引用)

事件の争点

①男女差別は憲法24条で保障されているため憲法14条に違反しないか。

参考条文

憲法第十四条 すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。
② 華族その他の貴族の制度は、これを認めない。
③ 栄誉、勲章その他の栄典の授与は、いかなる特権も伴はない。栄典の授与は、現にこれを有し、又は将来これを受ける者の一代に限り、その効力を有する。

解説

 他にも同様の「住友電工事件」「野村證券コース別人事訴訟」などがありますが、基本的な構造は同じですので、ここでは特に掲載することはしません。現代の常識から言うとこれはあり得ないだろうと言う話になりますが、同様の訴訟がいろいろあることからも読み取れるように、このようなことが罷り通っていた時代があったと言うわけなんですね。以下に判決はあらためて載せることにはしますが、公序良俗に反すること(これを定義しているのが民法90条)だとしてこのような就業規則は無効としました。
 公序良俗とは公の秩序や善良の風俗を乱すもの、つまり倫理的にまずいことをすること(例:奴隷的扱いをすることなど)は無効とするものです。

判決

最高裁民法90条の規定により男女別定年は違法。日産自動車の上告は棄却とする。

 

 今回はここまでです。次回最高難度の判例が待ち構えています。心して臨みましょう。