【まとめノートつき】民主主義思想をどこよりも詳しく解説ー原典を読もう!2

 この記事では高校公民科「政治・経済」の内容を説明しています。説明を読む際はぜひ授業テキストを印刷して使用してください。穴埋め形式になっています。
 またテキストがなくても説明は完結するよう作ってあるので安心してください。

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 前回は権利章典までを扱いました。それでは今日はバージニア権利章典から扱います。バージニア権利章典は1776年に世界で初めて自然権思想を盛り込んだ人権に関する宣言になります(空欄47)。以下に原典を示しますから、確認してください。1で自然権について定義していますね。これにより人権宣言の先駆とされています。
 ここで注意して欲しいのが、自然権が最初に訴えられたのが、「フランス人権宣言」とか「アメリカ独立宣言」と間違えて覚える人が非常に多くいます。世界初めては「バージニア権利章典」だ、と覚えてしまってよいでしょう。

第1条 全ての人は生まれながらにして等しく自由で独立しており、一定の生来の権利を有している。それらの権利は、人々が社会のある状態に加わったときに、いかなる盟約によっても、人々の子孫に与えないでおいたり、彼らから奪うことはできない。すなわち、財産を獲得して所有し、幸福と安全を追求し獲得する手段と共に生命と自由を享受する権利である。

第2条 あらゆる権力は人民に与えられそれ故に人民から得られる。行政官は人民の被信託者であり僕であって、常に人民に従うものである。

第3条 政府は人民、国家あるいは社会の共通の利益、保護および安全のために制度化されるものであり、あるいはされるべきである。様々な様式や形態の政府の中でも、最大限の幸福と安全を生み出すことができ、悪政の危険に対して最も効果的に防御されているのが最善である。いかなる政府もこれらの目的について不適切であるとか反していると認められたときには、公共の福祉に最も資すると判断される方法で、政府を改革し、置き換え、あるいは廃止する疑いも無く、不可分で剥奪できない権利を社会の多数派が持っている。

第5条 国家の立法権と行政権は司法権から分離され区別されるべきである。立法部と行政部の構成員は人民の負担を感じ取りそれに参加することで抑圧から抑えられるかもしれないので、一定期間私的な位置付けに下げ、元々所属していた団体に戻すべきであり、その空席は、繰り返され、一定で規則的な選挙で補充されるべきである。この選挙で前の構成員の全部あるいは一部が再び選出されるかあるいは不適とされるかは、法律によって示されるべきである。

出典:Wikipedia

 次はアメリカ独立宣言です。バージニア権利章典と同年に発表された宣言になります。これはイギリスからの植民地支配を抜け出すための独立戦争に終止符を打ったような状態です(空欄48)。この中では国家規模で様々な人権を訴えた内容になります。これは次に紹介するフランス人権宣言にも大きな影響を与えることになります。

人類の歴史において、ある国民が、他の国民とを結び付けてきた政治的なきずなを断ち切り、世界の諸国家の間で、自然の法と自然神の法によって与えられる独立平等の地位を占めることが必要となったとき、 全世界の人々の意見を真摯に尊重するならば、その国の人々は自分たちが分離せざるを得なくなった理由 について公に明言すべきであろう。

われわれは、以下の事実を自明のことと信じる。すなわち、すべての人間は生まれながらにして平等で あり、その創造主によって、生命、自由、および幸福の追求を含む不可侵の権利を与えられているという こと。こうした権利を確保するために、人々の間に政府が樹立され、政府は統治される者の合意に基づいて正当な権力を得る。そして、いかなる形態の政府であれ、政府がこれらの目的に反するようになったと きには、人民には政府を改造または廃止し、新たな政府を樹立し、人民の安全と幸福をもたらす可能性が 最も高いと思われる原理をその基盤とし、人民の安全と幸福をもたらす可能性が最も高いと思われる形の権力を組織する権利を有するということ、である。

出典:アメリカンセンターJAPAN ホームページ

 続いてフランス人権宣言です。キャッチコピーは近代市民社会の原理を確立、ですね(空欄49)。ロックやルソーからも影響を受けながら、バージニア権利章典アメリカ独立宣言からも影響を受けながらできた内容になります。これはフランス革命の進行中に議会で可決された内容になります(空欄50)。この中では「自由・平等・友愛」の精神を明らかにする内容となりました(空欄51)。

第1条 人は、自由、かつ、権利において平等なものとして生まれ、生存する。社会的差別は、共同の利益に基づくものでなければ、設けられない。

第2条 すべての政治的結合の目的は、人の、時効によって消滅することのない自然的な諸権利の保全にある。これらの諸権利とは、自由、所有、安全および圧制への抵抗である。

第3条 すべての主権の淵源(えんげん=みなもと)は、本質的に国民にある。いかなる団体も、いかなる個人も、国民から明示的に発しない権威を行使することはできない。

第4条 自由とは、他人を害しないすべてのことをなしうることにある。したがって、各人の自然的諸権利の行使は、社会の他の構成員にこれらと同一の権利の享受を確保すること以外の限界をもたない。これらの限界は、法律によってでなければ定められない。

第6条 法律は、一般意思の表明である。すべての市民は、みずから、またはその代表者によって、その形成に参与する権利をもつ。法律は、保護を与える場合にも、処罰を加える場合にも、すべての者に対して同一でなければならない。すべての市民は、法律の前に平等であるから、その能力にしたがって、かつ、その徳行と才能以外の差別なしに、等しく、すべての位階、地位および公職に就くことができる。

第7条 何人も、法律が定めた場合で、かつ、法律が定めた形式によらなければ、訴追され、逮捕され、または拘禁されない。…

第10条 何人も、その意見の表明が法律によって定められた公の株序を乱さない限り、たとえ宗教上のものであっても、その意見について不安を持たないようにされなければならない。

第11条 思想および意見の自由な伝達は、人の最も貴重な権利の一つである。…

第16条 権利の保障が確保されず、権力の分立が定められていないすべての社会は、憲法をもたない。

第17条 所有は、神聖かつ不可侵の権利であり、何人も、適法に確認された公の必要が明白にそれを要求する場合で、かつ、正当かつ事前の補償のもとでなければ、それを奪われない。

 

出典:樋口陽一・吉田善明編『改定版 解説世界憲法集』-三省堂

 

 以上ここまで紹介してきた3つの原典は時代も非常に近いため間違いが起こりやすくなっています。ではここで見分けるポイントを紹介していきます。
 まずバージニア権利章典は「人は独立していて、権利を持っている」という内容で人間の自然権を定義しています。これと比較してアメリカ独立宣言は「人は平等に造られて天賦の権利がある」と定義しています。これで2つを見分けることができます。またバージニア権利章典が番号が振られているのに対して独立宣言は文章になっています。裏技的な方法ですが、このように見分けることが可能です。そしてフランス人権宣言では思想とかの権利についても言及している、ことで見分けることが可能です。

 では本日最後の原典を紹介していきましょう。ワイマール憲法です(空欄52)。1919年ですから約100年前の内容ですが、非常に近代的な内容で、社会権を初めて規定した憲法です(空欄53)。社会保険などの制度が整えられている内容です。

第109条           ①すべてドイツ人は, 法律の前に平等である。

②男性と女性は, 原則として同一の公民的権利及び義務を有する。

③出生又は門地による公法上の特権及び不利益取扱いは, 廃止されるもの                                とする。

第 151 条          ①経済生活の秩序は, すべての人に, 人たるに値する生存を保障することを                  目指す正義の諸原則に適合するものでなければならない。各人の経済的自由                    は, この限界内においてこれを確保するものとする。

                       ②法律的強制は, 脅かされている権利を実現するため, 又は, 公共の福祉                                の優越的な要請に応ずるためにのみ, 許される。

                       ③通商及び営業の自由は, ライヒ法律の定める基準に従って保障される。

第153条            ①所有権は, 憲法によって保障される。その内容及び限界は, 諸法律に基づいてこれを明らかにする。

                       ③所有権は, 義務を伴う。その行使は, 同時に公共の福祉に役立つものであるべきである。

第 159 条         ①労働条件及び経済的条件を維持し促進するための団結の自由は, 何人にも, そしてすべての職業に対して, 保障されている。この自由を制限し, 又は妨害することを企図するすべての合意及び措置は, 違法である。

第 161 条          健康と労働能力を維持するため, 母性を保護するため, 並びに老齢, 病弱及び生活の変化のもたらす経済的帰結に備えるために, ライヒは, 被保険者の決定的な協力の下に, 包括的な保険制度を創設する。

出典:岩波書店ホームページ(一部変更)

 


 さてここからは余談です。ただテストには出題されやすい部分ですからしっかり扱います。「ナチス・ドイツはなぜ誕生したのか」です。このような憲法による法の支配でなぜ誕生したのでしょうか。ヒトラーが巧みに宣伝をすることで、国民の多数がヒトラーを支持し、それで調子に乗って「全権委任法」という全ての権利をヒトラーに委任しよう、という法律により独裁が成立したのです。教訓はいくつかありますが、一つに最終的にまとめることができるでしょう。「政治に無関心になることは非常に危険である」と。

 次回も続きをお送りします。今回も原典が多いので量を減らしました。ひとつひとつどのような経緯があって、どのような役割を果たしたのか確認していきましょう。